「東芝」「富士通」「VAIO」の3社が「パソコン事業を統合する」と合弁交渉に入ったと国内の新聞各社が一斉に報じました。
東芝、富士通、ソニーのパソコン部門が独立したVAIO(バイオ、長野県安曇野市)の3社はパソコン事業を統合する検討に入った。実現すれば国内シェアで3割強とNECレノボグループを抜いて首位のパソコン企業が誕生する。会計不祥事を受けて東芝が進めるリストラを機に、日本のパソコン勢が生き残りをかけて結集する再編が動き出す。
3社は近く統合に向けた具体的な交渉に入る。年内にも基本合意し、来年4月に新体制を発表する可能性がある。
Source :日本経済新聞
3社が合弁すると国内シェア第一位に
国内パソコンシェアでは、富士通が19.3%で2位。東芝は12.5%で3位となっている。VAIOはその他で、SONYから独立した後はほとんど売れていないと思われる。
この3社が合弁となると、VAIOのシェアを考えなくても東芝+富士通で31.8%と、NECレノボを抜いて国内シェア1位となる。
出典 :読売新聞
世界シェアでは統合後も7位という位置づけだ。
ただ東芝は海外メーカーとの提携も視野に入れており、この合弁がすぐに成立とは行かない可能性もある。
合弁後はどうなる?
個人向けPC販売は頭打ちな昨今、東芝にしても富士通にしてもある程度需要が見込める「法人向け」パソコンにシフトし、部品を共通にして調達コストを下げるという見込みで生き残りに賭けるよう。そういう戦略の元、VAIOがここに絡むのは微妙だが、個人向けはVAIOが、法人向けは富士通x東芝みたいな形になるのだろうか?
法人向けパソコンは甘い世界じゃない
私は法人に非常に強いPCメーカーに居たので、東芝や富士通の法人PCと比較する事も多くあったのだが、正直「良いパソコン」とは言いがたいものだった。
決して安くない(これは個人向けもそうだが)上に、メンテナンスがしづらい。
企業のPCは個人向けPCよりもハードに使われる。営業だけでなく社員は毎日ミーティングや会議で持ち歩くし、破損も多い。
そういった際にメンテナンス時間の短縮=社員一人一人のビジネスを止めない(メンテをするヘルプデスク含む)事にまで言及された設計思想が富士通や東芝のPCには見当たらない。
更にダウンタイムを最小化する為に、保守パーツの配送は当日配送も必要だし、修理も当日出張修理、問題が合った場合の原因究明速度も高く要求される。
合弁で部材コストが下がり、PCの価格が下がればもっと売れるはずだという考えなら非常に危うい。
なぜこの3社が「売れていない」のか、原因をよく考えて国内シェア1位メーカーとして責任をもって合弁化して欲しい。
個人向けPCも甘くない
私個人は完全に「がんばれ! にっぽん」の気持ちは大いにある。
しかし、
単純に個人向け:コンシューマパソコンを見ても、デザインでは外資系メーカーに勝てていないし、価格では完敗と言っても良い。
サポートもアウトソースしているだろうから、それほど質は変わらない。(DELLやHPのように、スキルが無い中国人に繋がるのもどうかなとは思うが)
シェアが高まるとは言え、PCの国内販売は年々下がっており、利益確保の為だけでなく、国内パソコンの出荷台数を伸ばすのであれば、よりデザインが良く、安いパソコンを作り、それでいて利益確保できる企業体質やビジネスモデルを考えないと外資系メーカーには勝てないだろう。
出典 : 国内PC出荷金額と平均単価の推移(出典:MM総研)
世界を相手に「良いもの」が作れるか?
まずはデータを。
これはIDCが出したタブレット、ノートPC、PC全体の世界での出荷台数予測推移。
あくまでForecast(予測)ですが、2016年はタブレット出荷台数が、PC全体を抜くことになります。
そして以下はIDCが出したワールドワイドのタブレット出荷台数予測だ。
出典:DAZEINFO
一番下の紫のラインが日本。
濃いブルーはアジアで括弧書きで[ex. Japan]とあるのは、日本を除くアジア市場という事。
『日本以外』では、物凄くタブレット市場が伸びていく予測である事が分かる。
これを見て分かるのは、日本市場は飽和状態であり、メーカーは「世界中で勝負できるデバイスを作らないと生き残れない」という点。
このブログでは、中華タブレットの恐ろしいほどの安さ、性能の良さを紹介していますが、そこまで安さを追求すべきとは言わないものの、何か他メーカーと違いや付加価値を生み出さなければモノは売れないのは自明の理。
スマホ市場も同様ですが、Appleと似た製品をAppleと同価格で売っても当然売れません。
PCやタブレットではSurfaceのおかげで2in1が流行り始めていますが、東芝が出した2in1のDynaPad N72はSurface Pro4よりも高い。
同じ価格なら、多くの人は「iPhone」を買うし、「Surface」を買う。当たり前のことが分かっていないと東芝や富士通のPC、タブレット、スマホを見ていて思う。「イイモノ」というだけでは売れないのです。
低価格で戦ったら消耗戦だという点はよく分かりますが、いまのままでもジリ貧は間違いない。
そういう意味では合弁により考えをリセットできるのは良いこと。
そこでよく考えて欲しいのは、製造コスト減だけでなく、利益構造、商品価値が「世界レベル」で勝てるかどうかという点です。
私が見ている限り、東芝にしても富士通にしてもワールドワイドに対して全く攻めていない。(VAIOは論外だが・・・)
安くてイイモノは日本の専売特許だったが、今は「そこそこ良いけど高すぎる」のです。
安くてイイモノブランドは、Acer、ASUS、Lenovoなどの外資系メーカーに簡単に奪われた。
世界が変わったのでは無く、日本メーカーが変わったのだ。
安くてイイモノを作る努力を怠っている、考えが硬直している、古いといわれても仕方が無い。
『日本でイイモノ作ったから世界でも売れるよね』の時代はとっくに終わったわけ。
そして日本国内ではこの先需要が増していく様子も無い。
であればやることは一つ。
がんばれ! にっぽん!